2024年 11月 20日
11月22日(金)からDolby Cinema上映を控えている、ゲキ×シネ『吉原御免状』。 ゲキ×シネプロデューサー・金沢の悲願でもありました本作のゲキ×シネ上映が20周年を機に実現したことを受け、”金沢が語る本作の製作記&隆慶一郎氏の書籍紹介”を連載中です。 本日は【第四回】。 ゲキ×シネ『吉原御免状』プロダクションノート的な映像に関する製作記をお届けいたします。 新『吉原御免状』サウンド編 です!どうぞ! 『吉原御免状』ゲキ×シネプロデューサーが語る製作記 【第4回】新『吉原御免状』サウンド編 こんにちは、ゲキ×シネプロデューサーの金沢です。 Dolby Atmosでの制作は今回6作品目。 ゲキ×シネのサウンド制作は、『シレンとラギ』以降ロスアンゼルスで百戦錬磨のミキサーらとサウンド制作した経験値や、ヒロ(サウンドデザイナー:Hiro Ishizuka)と出会えたことなどで飛躍的に進歩しています。 ■[Dolby Atmos]って? 通常シアターの基本的なスピーカーレイアウトは、正面スクリーン裏に左、右、センターの3スピーカーとサブウーハーがあり、座席横の壁面と後の壁面にもスピーカがあります。スピーカーは水平方向のみに並ぶことになります。7.1chと5.1chとの違いは、横と後ろを分けて出力できるか、一緒の出力かの違いです。 Dolby Atmosのシアターで通常と大きく違うのは、通常のスピーカーにプラス、天井2列のスピーカーがあること。厳密にはもう少し違いますが割愛します。 また、通常シアター向けのサウンドは、たとえばですが、正面左右のスピーカーに音楽、センターに台詞、とそれぞれの個別のスピーカに出力する音を指示します。 Dolby Atmosは出している音に位置情報をつけることができます。たとえば、客席13列目10番の頭上あたりで鐘を鳴らす、みたいなことが可能になります。実際には限定的すぎてこの使い方はしませんが、最大64chありますので、細かい表現が可能になります。 ■サウンド『吉原御免状』 時間が経っていて、当時使っていたハードウェアが使えない、プラグインが使えない、音源が使えないという事。なので今回のゲキ×シネは、基本同じように再現していますが、楽曲すべてをあらたに作り直されたものとなっています。 また小説の世界で見世清掻(みせすががき)の記述が多く登場するので、背景音と劇中で三味線を追加したいと考えました。ところがこの長唄も発生していない1650年代に三味線で一体どういった演奏がなされていたのか、素人が調べても資料にたどり着けず、東京藝術大学邦楽科の味見教授に相談しました。 当初相当単調な調べを弾いていたのでは、というのが結論だったのですが、劇中で使用となると、ちょっと音楽として弱くなってしまいます。なので今回はもう少し後の時代に登場する調べを演奏していただいています。 ゲキ×シネ公開後に行われたトークショーでちょっと話題が出ましたが、刀剣のキャラクター付けに関しも、今回音が重要な役目を果たしています。例えば幻斎の持つ刀剣。原作小説で長くよく撓う(しなう)という表現があったので、この刀剣には弾力のある剣の音をイメージしながら試行錯誤をして制作しました。 今回のファイナルミックスはヒロが率いる若手ミキサーを交えたサウンドチームが、精力的に取り組んでくれました。そのおかげで台詞と効果は明瞭で聞きやすく、20年前とは思えないできあがりです。 『狐晴明九尾狩』で ロン・バートレット(映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」で第85回アカデミー賞にノミネート)、『蒼の乱』と『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』で マイク・プレストウッド・スミス(映画「ミッション:インポッシブル-フォールアウト」のベストサウンド部門で英国アカデミー賞にノミネート)がミックスしてくれています。ロンは「ライフ・オブ・パイ」で初期のDolby Atmosミックスをして経験値は豊富。マイクはDolby Atmosで音楽を空間ベースで心地よく鳴らすことでは右に出る者はいないと思います。 『狐晴明九尾狩』『蒼の乱』『薔薇とサムライ2』をDolby Atmosで御覧頂ける機会があればぜひ音にも注力してご堪能いただけると幸いです。
→次回に続く ~隆慶一郎さんの書籍紹介~ 📖『捨て童子・松平忠輝』(1989年) アラウンド『吉原御免状』。 徳川家康の六男で、家康から一度捨てられた息子松平忠輝。鬼っ子と恐れられ遠ざけられたのにもかかわらず、道々の輩に鍛えられ、やがて凜々しい青年へと変化します。 武に長け、一度会った人間から注目と好意を一身に受け、ラテン語に精通、浅草のバテレン診療所で医療を学び、おおよそ大名とは思えぬ行動をする忠輝。知的な好青年に昇華した忠輝を見る家康の目は即座に変わります。 『吉原御免状』でも登場した徳川秀忠ですが、その描き方は、隆さんの作品でお約束ながら人間的には相当人望の薄い男です(笑)。人望厚い忠輝へ嫉妬と殺意がめらめらと押し寄せてくる。そんな忠輝に柳生を使って暗殺しようとするがそうは問屋が卸さない。 鬼っ子の痛快な生き様に惚れ惚れする作品です。
by geki-cine
| 2024-11-20 12:00
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