2024年 11月 15日
ゲキ×シネ『吉原御免状』Dolby Cinema上映が全国8館にて11月22日からスタートいたします!(Dolby Cinema上映の詳細はこちら) そのDolbyCinema上映を記念して、19年前上演当時に発行していた公演パンフレットに掲載されていた《 feature on YOSHIWARA GOMENJO特集 吉原御免状の世界 》の一部をゲキ×シネブログにて復刻連載! 手掛けた歴史、時代小説ジャンルのアンソロジーは百冊近いという文芸評論家の縄田一男さんによる、《 隆慶一郎と『吉原御免状』の世界 》。 前回は『吉原御免状』の主人公である松永誠一郎の神性はどこからくるのか、隆慶一郎氏が誠一郎というキャラクターになにを込めたのか、を解き明かしました。 お次は、第三章『隆慶一郎の漂泊の精神』。 『吉原御免状』を産んだ大型剣豪作家、隆慶一郎のルーツに迫ります。 ※本連載にはストーリーの展開に関わる内容が含まれておりますので、ご了承いただいた上でご覧くださいますようお願い申し上げます。 ※2005年上演 劇団☆新感線『吉原御免状』 公演パンフレットより転載 (文/縄田一男) 【第二章】隆慶一郎の漂泊の精神 さて、ここで、隆慶一郎の経歴を引いておけば、隆慶一郎は、大正十二年、東京は赤坂の生まれ。旧制第三高等学校を卒業し、東京帝国大学仏文科に入学するも、学徒出陣し、中国大陸を転戦。宮崎で終戦を迎えている。 昭和二十年、東大に再入学し、フランス象徴派の詩人たちに深い傾倒を示した。辰野隆や小林秀雄が恩師である。同学卒業後は、その小林秀雄を慕って創元社の編集に携った後、中央大学、立教大学の教壇に立ち、フランス語を教えた。 昭和三十四年、中央大学助教授の職を辞した後は、本名の池田一朗の名でシナリオライターとして活躍。代表作にシナリオ作家協会賞を受賞した『にあんちゃん』や司馬遼太郎原作の『忍者秘帖・梟の城』や『城取り』等がある。 小説家に転じたのは、六十歳を超えてからであり、一説によれば、恩師・小林秀雄が生きている間は、怖ろしくて小説が書けなかったからだといわれている。しかしながら、それにしてもと、ここで誰もが思うのは、大学の助教授からシナリオライター、そして流行作家へと、傍目から見れば、華麗とも、奔放とも見える、この生涯三度の転身である。 ここで、隆慶一郎の父方の曾祖父を引き合いに出せば、彼は、剣の道に一生を賭けて全国行脚をした人物で、その手のひらは、普段、私たちがそれを結んだり開いたりする動作は出来ず、刀を持ったかたちのまま固定されており、木剣がその中にスッポリと収まったという。この曾祖父は、廻国修業中であったため、明治維新のあったことを知らなかった。 また祖父は、函館で船医となるも、突如、この地を出奔、故郷・松代に帰り、この地を治める侠客となったために、親類縁者から総スカンを喰らい、幼い隆慶一郎だけが肝胆相照らす友であったという。 とにかく、自由かつ破天荒なのである。そしてこの血は隆慶一郎の中にも脈々と流れていたのではないのか。 そんな父のことを長女・羽生真名は「雲のような人だった。ふわふわと空に浮かび、お天気と風向きの他には、特に影響されるものはないようにみえる雲。風が吹けば流れて行き、その時々に色や形を変えておもしろがる、入道雲のような人だった」(『歌う舟人──父隆慶一郎のこと』)と記している。 だが、この雲は、外見の陽気さとは別に、己れの自由な身の強固さに途惑い、時には焦立っていたのではあるまいか。そして、この隆慶一郎の持った、いや隆慶一郎だから持ち得た自由な漂泊の精神に、その裏づけとなるアイデンティティーを与えたのが、前述の網野史学だったのではあるまいか。 道々の輩、公界の者──彼ら放浪の自由民たちの発見は、隆慶一郎の心にようやく安住の地をもたらし、自分の持っている自由の意味は、はじめて歴史をさかのぼって位置づけられたのである。このことは、何故、隆慶一郎が、歴史・時代小説というかたちを通して己れの思想を問わねばならなかったのか、ということの解答足り得ているように思われる。 その隆慶一郎の出発点である『吉原御免状』が、このたび、劇団☆新感線のエネルギッシュな舞台にかけられるという。今から楽しみでならない。 文/縄田一男 DolbyCinema上映記念 復刻連載!《 隆慶一郎と『吉原御免状』の世界 》の連載はこれにて終了。 いのうえ歌舞伎の源流、『髑髏城の七人』のルーツ的な作品、と語られる本作と、座付き作家である中島かずきさんが大ファンである隆慶一郎さんに深く迫った本作。 すでに映画館でご覧いただいた方に更に本作を楽しんでいただく鍵となることを願っています! 通常上映でご覧になった方も、お近くの映画館でDolbyCinemaの上映があったら是非一度ご覧いただきたい。 19年前の作品が映画館の大スクリーンで鮮やかに甦るのをご堪能くださいませ! ゲキ×シネ『吉原御免状』Dolby Cinema上映記念 公演パンフレット復刻連載 <隆慶一郎と『吉原御免状』の世界> 目次 隆慶一郎さんの描く『吉原御免状』の世界をよりご堪能されたい方は是非原作本もチェックしてみてください👀 映像・音響・シアターデザインに力を入れた「究極のシネマ体験」と言われるドルビーシネマ。 通常の500倍のコントラストと驚異的な色域により色鮮やかでリアルな映像を創り出す“ドルビービジョン”と、息をのむほどリアルなサウンドが空間を包み込む“ドルビーアトモス”で江戸・吉原の世界に没入する体験をご堪能ください。 新編集版は効果音なども刷新しており、吉原の街のざわめき、花魁の高下駄の音、刀の触れ合う音や、衣擦れの音、呼び込みの三味線の音色、語り尽くせないほどの細かいSEを入れ込んでおり、物語の持つ重厚感をさらにリッチに立ち上げています。 特別で極上のエンタメ体験を、ゲキ×シネでお楽しみください! 2024年11月22日(金)からドルビーシネマ上映! ゲキ×シネ『吉原御免状』
by geki-cine
| 2024-11-15 12:03
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