2024年 11月 15日
ゲキ×シネ『吉原御免状』Dolby Cinema上映が全国8館にて11月22日からスタートいたします!(Dolby Cinema上映の詳細はこちら) その上映を記念して、19年前上演当時に発行していた公演パンフレットに掲載されていた《 feature on YOSHIWARA GOMENJO特集 吉原御免状の世界 》の一部をゲキ×シネブログにて復刻連載いたします! 手掛けた歴史、時代小説ジャンルのアンソロジーは百冊近いという文芸評論家の縄田一男さんによる、《 隆慶一郎と『吉原御免状』の世界 》。 三章構成でお届けいたしますのでお楽しみに! まずは、第一章『無縁・平等のユートピア』。 隆慶一郎氏が描いた"道々の輩"の存在。"無縁"とはなんなのか。 『髑髏城の七人』『アテルイ』『蒼の乱』などにも登場する"まつろわぬ民"についての理解が深まる章です。 ※本連載にはストーリーの展開に関わる内容が含まれておりますので、ご了承いただいた上でご覧くださいますようお願い申し上げます。 ※2005年上演 劇団☆新感線『吉原御免状』 公演パンフレットより転載 (文/縄田一男) 【第一章】無縁・平等のユートピア では、そのテーマとは何か?敢えて結論からいえば、隆慶一郎作品が総体として目指していたもの──それは歴史の中に秘められた壮大なユートピア物語の構想だったのである。そして、これを可能にしたのが、放浪の自由民、“道々の輩” “公界(くがい)の者” たちの発見に他ならない。 隆慶一郎は、対談「日本史逆転再逆転」の中で、「あの連中は面白くてしょうがないですね」といい、また、随筆集『時代小説の愉しみ』のあとがきで「きまった土地も家も持たず全国を放浪して一生を終えた人々。更には海人(あま)・山人(さんじん)・輸送業者。こうした一種の自由民たちの眼で歴史を眺めたら、一体どんな様相が展開するか」と語っている。 傀儡子、山伏(やまぶし)、陰陽師(おんみょうじ)、勧進聖(かんじんひじり)、説教師(せっきょうし)、猿楽師(さるがくし)、楽人(うたまいのひと)、舞人(まいうど)、遊女(ゆうじょ)、巫女(みこ)、そして『吉原御免状』では、主人公・松永誠一郎に、夢を通じ、昔を生きることによって、傀儡子の歴史を伝える熊野比丘尼(くまのびくに)等々。 彼らは、主に遊芸をはじめとする、様々な職業につき、全国を自由に往来した漂泊の民であり、彼らが身を置くのは、あらゆる差別のない “無縁” の境遇であり、目指すものは、権力不入のユートピア “公界” の創造である。 例えば、中世日本には、花の下連歌なるものがあった。乞食同然の念仏聖(ねんぶつひじり)が、法聖寺の枝垂れ桜の下に、貴賤を問わず多くの人々を集めて催した連歌の会では、参加者は、各々の身分・姓名を隠すことを義務づけられ、出席者の中には、それこそ、時の上皇から仏聖まであらゆる階級の人がいたという。文化・芸能を通して完全なる “無縁・平等” の世界が現出した、これは良き証左であろう。 しかし、中世において数多く存在した彼らは、天下を狙う武将にとっては己れの権力に屈しない正に眼の上のこぶ的存在。家康亡き後の徳川政権下では不当な差別を加えられ、遂には歴史の表面から追いやられていってしまう。だが、彼らを再び歴史の表舞台に立たせたらどうなるのか──。 このような発想の背後には、常に隆慶一郎の最新の歴史学への関心が息づいており、彼が最も深い傾倒を示した網野善彦は、『日本中世の非農業民と天皇』や『無縁・公界・楽──日本中世の自由と平等』の中で、中世を闇の世界から解放、さまざまな職業に従事する特殊集団、“道々の輩” や “公界の者” たちが、天皇や神仏に帰属することで全国を自由に放浪する特権を持っていたこと、そして彼らが、世俗の人間とは “無縁” の立場を取り、“公界” と称しつつも、公権力を排した不可侵のユートピアのネットワークを持っていたことを明らかにしたのである。 そして総体として隆慶一郎作品が目指したものは、歴史上の有名無名のヒーローと中世放浪の自由民たちの人間の尊厳を守るための戦いであり、最大の魅力は、最新のアカデミズムをロマンの夢に組み替える際に生じる重層的ダイナミズムにあったのではないのか。 文/縄田一男 今回は、『吉原御免状』で描かれている"道々の輩"について詳しく掘り下げられました。
中島かずきさんが描く世界にも度々登場する権力に迎合しない"まつろわぬ民"。 中島さんと隆慶一郎作品との出会いにより生まれたといっても過言ではない『髑髏城の七人』。 いのうえ歌舞伎の源流に流れるものに深く通じるものがありますね。 次回は『吉原御免状』の主人公である松永誠一郎について。生い立ちに秘められたメッセージとは? お楽しみに! ゲキ×シネ『吉原御免状』Dolby Cinema上映記念 公演パンフレット復刻連載 <隆慶一郎と『吉原御免状』の世界> 目次 隆慶一郎さんの描く『吉原御免状』の世界をよりご堪能されたい方は是非原作本もチェックしてみてください?? 映像・音響・シアターデザインに力を入れた「究極のシネマ体験」と言われるドルビーシネマ。 通常の500倍のコントラストと驚異的な色域により色鮮やかでリアルな映像を創り出す“ドルビービジョン”と、息をのむほどリアルなサウンドが空間を包み込む“ドルビーアトモス”で江戸・吉原の世界に没入する体験をご堪能ください。 新編集版は効果音なども刷新しており、吉原の街のざわめき、花魁の高下駄の音、刀の触れ合う音や、衣擦れの音、呼び込みの三味線の音色、語り尽くせないほどの細かいSEを入れ込んでおり、物語の持つ重厚感をさらにリッチに立ち上げています。 特別で極上のエンタメ体験を、ゲキ×シネでお楽しみください! 2024年11月22日(金)からドルビーシネマ上映! ゲキ×シネ『吉原御免状』
by geki-cine
| 2024-11-15 12:01
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