『吉原御免状』ゲキ×シネプロデューサーが語る製作記【第2回】〜なぜ今『吉原御免状』？<後編> : ゲキ×シネ公式ブログ

2024年 11月 06日

『吉原御免状』ゲキ×シネプロデューサーが語る製作記【第2回】〜なぜ今『吉原御免状』？<後編>

ゲキ×シネ20周年を記念して現在絶賛公開中のゲキ×シネ『吉原御免状』。

ゲキ×シネプロデューサー・金沢が語る本作の製作記＆隆慶一郎氏の書籍紹介”の【第一回】はいかがでしたか？
<前編>でしたので、続きが気になった方も多かったのでは？

ということで、お待たせいたました！

【第二回】なぜ今『吉原御免状』？の<後編>をお届けします！

『吉原御免状』ゲキ×シネプロデューサーが語る製作記

【第2回】なぜ今『吉原御免状』？<後編>

こんにちは、ゲキ×シネプロデューサーの金沢です。

さて、もう一つの問題、それは舞台を多数のカメラで撮影して、映画館で上映しようなんてまだ誰も考えてもなかったこと。

私個人もゲキ×シネをはじめたころはまだ映像製作に関する知識や経験がほぼゼロの赤子状態。『アカドクロ』から『朧の森に棲む鬼』あたりの製作初期の作品は、よく映画館にかける状態にできたなぁとしみじみ感じます。

というわけで、前例や事例がなかったのでとにかく毎回なにをやるにも暗中模索。メーカーやスタジオで詳しい人に話を聞きまくったり、映画館の技師やら果ては北米の事例をおっかけたりして、なんとか上映に結びつけていた時期でした。

いまじゃ考えられないくらい苦労していました。いろいろと吸収できて楽しかったですけれどね。

そして『吉原御免状』。2005年9月に撮影して、ゲキ×シネ第5弾として撮影をおこないました。

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ところがこれらの端境期に揉まれに揉まれたあげく、制作中に数々のトラブルもありゲキ×シネとして完成されるには長期化の気配が漂い始めました。

当時としては映像製作費が大きかったので早くしないと会社の経営が傾きます。それにゲキ×シネ自体もまだ始まったばかりでさして売上げはありません。やむをえずDVDを先にリリースする判断をすることになりました。当時、DVDが発売された後の作品は、映画館が上映を断る時代でした。これで完全に『吉原御免状』の上映の機を逸しました。

まさにフィルム上映とデジタル上映創世記の端境に製作したのがこの『吉原御免状』ということになります。

まあそのおかげで、ダイイングメッセージにも遺言にも「必ず、必ず吉原御免状の上映を！」と書きかねないくらいくらいにゲキ×シネ製作史のなかで悔やんでも悔やみきれない私個人的には因縁の作品となったわけです。

ゲキ×シネ20周年記念として公開できることになり、やっと肩の荷が下りた気がします。

今回完成し、何度となくゲキ×シネ『吉原御免状』を見ていますが、この19年を与えてくれたことを感謝しています。

当時はまだまだ未熟で、舞台の素晴らしさに達していなかったのでは、と。まさに映像製作をしている自分の経過を眺めているような気分にさせられる作品です。19年前の自分へ挑み、戦い、少しでもみなさんの心に残る作品になっていれば、この時代を超えた作品に意味があると思います。

2005年に20年前の演劇を見ることはかなわなかった。ゲキ×シネの存在意義がそこにあると信じています。

→次回に続く

『吉原御免状』ゲキ×シネプロデューサーが語る製作記【第3回】〜新『吉原御免状』映像編

～隆慶一郎さんの書籍紹介～
📖『かくれさと苦界行』(1987年)

吉原御免状の続編、6年後の世界が描かれています。

誠一郎の前に、隻腕となった義仙が現れ激突する。柳生から死んだと思われていたお館さまが江戸に現れることでさらに事態は混迷する。

この小説、吉原御免状の翌年にこのボリュームある時代長編が出版されています。

当初からこのかくれさとまでの物語の構想があったということでしょうか。まるで映像であるかのように鮮明な描写、強烈な個性を持つキャラクター達。個人的には誠一郎と幻齊のやりとりがより深く踏み込んだものなったかんじで、後を託す者への切ない気持ちを感じる。